column 2022.10.13
 
Rトピックス

「デザインのパワースポット」としてのオフィス

西川 純司(株式会社アートアンドクラフト/大阪R不動産)
 

大阪R不動産を運営するアートアンドクラフトが物件探しから設計・施工まで一貫してサポートさせていただいたデザイン事務所・株式会社NASUの新しいオフィスが完成!ブランドコミュニケーションを得意とするNASUがこのオフィス空間に対して策定したコンセプトは「デザインのパワースポット」。代表の前田高志さんに話をお聞きしました。

「勝てるデザインを提供するデザイン事務所」を提供する株式会社NASUの新オフィス。リノベーションは完成したけれど、まだ“未完成”とのこと。更にアップデートしていくためにクラウドファンディングを実施されています!

「会社の思想を乗せたオフィスをつくりたい」

株式会社NASUの以前のオフィスは一棟リノベーションされたビルの一室でした。大阪R不動産でも募集をしたことがある建物です。前田さんは「洗練されたデザインで満足はしていたけれど、2区画借りられていたこともあり、同じくらいの固定費でもっと広いオフィスに移れるのでは?」と思案されていたそうです。
 
「前のオフィスでは既にしつらえられた空間のデザインに合わせて家具や什器を選ばざるを得ませんでした。単におしゃれな空間ではなくて、会社の思想をのせたオフィスをずっとつくりたいと思っていました。NASUが制作しているデザインも、ただかっこいい、かわいいデザインではなく、その会社でしかできないコミュニケーションを通じて創造される一点物ということにこだわっています。オフィスでもその精神を実践したいと考えていました」

左より、弊社不動産担当の上原(A&C)、同じく設計担当の川本(A&C)、中央がNASU代表の前田高志さん。一番右は筆者。

最初にお話を伺った時には一年くらいかけてもじっくり自分たちらしさが表現できる物件を探したいということでした。そして始まった移転計画。忍者屋敷のような古民家から、普通のオフィス用物件まで検討するなかで目に止まった物件がこの度の物件でした。前面道路かららせん階段を上って直接オフィスへアクセスでき、外壁から室内まで続くガラスブロックが特徴的な、都住創 石町(とじゅうそう こくまち)の一室でした。

新オフィスが入る都住創 石町の外観。らせん階段から直接オフィスに入ることができる。

自分たちらしいオフィスとは!?

この度完成したNASUの新オフィスは「デザインを楽しむ」という思想を体現することを意識して設計されました。通常のオフィスでは見かけないアイテムが散りばめられています。たとえば、「ジャングルナス」は、子どもの頃に公園でした“作戦会議”のように、ピュアで柔軟な発想で打ち合わせをすることを誘発します。「天空ネット」は木の上から周囲を見渡すようにデザインを俯瞰することのできるハンモック的なスペース。その他にもNASUのデザイン思想にも通ずる、意表を突かれる要素がたくさんあります。

左上)左上に見えるのが「天空ネット」。右側には、人工芝の上にジャングルジムとナスが置かれた「ジャングルナス」。右上)カーブした壁面と連動した曲線的な照明。左下)モザイクタイルで描かれたドット絵。右下)デスクとして利用している卓球台。以前のオフィスから使い続けている。

NASUはコロナ以前からリモートワークを積極導入し、オンラインを組み合わせながら働く場所をオフィスに限定しないあり方を体現してきました。また、代表の前田さんはNASUでのデザイン業とは別にクリエイターコミュニティ「前田デザイン室」の運営もされています。

オンラインに軸足を置いて仕事をしているとも言えるNASU代表の前田さんがリアルなオフィスの価値をどのように見出しているのか、とても気になるところです。

前田さんの著書『勝てるデザイン』。

「リモートはOKにしているけれど、オフィスへ来ること自体はもちろん大歓迎です。オフィスに来て先輩デザイナーの横で得られる情報量はかなり膨大なはずですから。それだけに行きたくなる場所であることが特にオフィスをつくるうえで大切だと考えています。今回、理想のオフィスを実現するために中途半端なことはやめようと決意した結果、当初の予算からオーバーしてしまいました。いまのNASUの事業規模からしたら異次元の投資です。だけど、ちょっと無理をしてでもこれまでの器を超えて行かないと、会社としては成長しないと思っています。大丈夫かなというくらいの逆境に置かれることで新たな種まきは活性化されるとも思っています。実際、新オフィスの完成間近からめちゃくちゃ仕事が増えました」

株式会社NASUのみなさん。

きっとこのオフィスはスタッフのモチベーションアップにつながるだろうし、この場所を訪れたクライアントや取引先の方々にはNASUの思想を肌で感じ取ってもらえると思います。コロナ禍以降、オフィスの存在価値が見直されています。かつては、同じ時間に、同じ場所へ出勤することが当たり前でした。そんな前提が覆された今だからこそ、これからますます多様化するであろうオフィスの表現に注目です。

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