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モノづくりの街として知られ、大阪でも有数の工業地帯である東大阪市。都市別工場密度は「全国1位」で工場が多い街としてのイメージが先行する一方で、大阪屈指の下町情緒を感じられるエリアであることはご存じでしょうか。文化住宅とよばれるような木造アパートが集積する古い町並み、その中にある旧弥生荘を舞台に木造アパート再編のレシピを提案します。

昔ながらの大阪を感じることのできる東大阪。
東大阪と言えば工業の街ですが、その発端は江戸時代にまで遡ります。元々生駒山や大和川の自然を生かした工業が生まれ、そこから産業の発展とともにその規模と種類を拡大させていきました。企業や工場が大阪市中心部から土地を求めて移設してきたことが、さらに工場街としての性格を強くさせたんだそう。
今となっては利便性や居住性も上がり、住みよい街としても知られつつある東大阪。新しい施設も整備されつつありますが、古い長屋や昔ながらの商店街が残されているのが魅力。こじんまりとした個人商店が立ち並び、神社や生駒山などの自然も残るような昔ながらの大阪の下町風情を感じることのできる街です。

文化住宅は大阪市中心部ではあまりお目にかかれないのでは。
東大阪市の街並みを象徴する木造住宅が密集する地域。戦後、工場労働者のために建設された木造アパートが今もなお生き残っています。大阪市中心部ではなかなかお目にかかれない文化住宅やナントカ荘と呼ばれるような比較的小規模な木造建物が建ち並ぶ光景は珍しいかと思います。
ところで文化住宅は2つの意味があるのをご存じでしょうか。ジブリ作品に出てくるサツキとメイの家に代表されるような洋風住宅を指すものと、近畿地方で高度成長期に建てられた木造2階建てのアパートを指すもの。起源も定義もあいまいなのですが、今回は後者の意味での文化住宅なのでご注意を。
ただ、前述したような木造アパートは文化としての役割を果たしているのですが、実際は建物の老朽化による危険性や、入居希望者の減少、入居者の高齢化などが問題としてささやかれることもしばしば。火災による被害も懸念されることから、建て替えやリノベーションの選択を迫られている建物もあると聞きます。
永和地区に建つ旧弥生荘。4畳半便所共用、風呂無し20戸の木造文化アパートを舞台にリノベーション計画が進行中です。

旧弥生荘。内部解体工事後の写真。既にワクワクしてきませんか。
【1】従前の記憶を残しつつ、イメージを刷新する
前段で説明したような木造アパートが抱える問題と同じく、入居者は既におらず空室となっていたこの建物。解体して新築マンションを建てる計画もあったそうですが、オーナーはリノベーションという選択をしました。きっとこのエリアの古き良き原風景を残していきたいといった想いもあったはず。
この計画をするにあたりオーナーから与えられた使命はこの建物の風景を残すことと新たな層の住民を呼び込むこと。その2点を手掛かりに、計画を進めていきました。

外壁塗装後、新旧のコントラストが印象的なファサード。
【2】規模・ターゲットの再構成
昭和38年築の木造建物。構造上及び使用していくうえで不安な点がいくつかあったので、今回のリノベーションで補修・補強する必要性がありました。また時代の移り変わりによって現在のニーズからかけ離れてしまった間取りや設備についても検討しなくてはなりません。
そこで今回は一度躯体解体工事を実施し、20戸の共同住宅から3戸の長屋へと用途変更を経て再構成しました。1部屋4畳半の広さからゆったりした広さの賃貸住宅に。また外壁クラックの補修や、梁せいを大きくするなど構造上・使用上の不安点の解消、さらに防湿対策や防寒対策も施し、機能性を担保した住みよい木造アパートを目指します。
【3】ガレージハウスというひとつの答え
今回企画したテーマが、ガレージを内包した賃貸住宅。従前の風呂無し、便所共有20戸の木造2階建文化アパートから、3戸の長屋へと大胆にイメージを変えました。
今回設計施工を担当するアートアンドクラフトが手掛けた住宅でもいくつか施工実績があり、ニッチな層に根強い人気を持つガレージハウス。
自転車やバイクなど愛車を大切にされたい方が、専用のガレージを持つことはもはや必須なのかもしれません。ただ、都心部では費用や場所の関係から実現できないことも多いはず。そんな方にもオススメできる物件になりそうな予感。ガレージでは自宅兼アトリエとしての利用もできるので、東大阪という街とも相性がよさそうです。

ガレージを内包した住まい。バイクや好きなものに囲まれて暮らしたい派にはもってこい。
東大阪の老朽化した木造アパートに命を吹き込む作業。そのひとつの答えとして今回は木造文化住宅からガレージを内包した長屋へと再編するレシピを公開しました。
モノづくりのまちとも親和性が良さそうなガレージハウス。今回ご紹介した物件は2021年1月下旬から2月上旬頃に入居者募集の開始を予定しています。今まで東大阪に縁が無かったという方もこの機会に注目してみてはいかがでしょうか。リリースをお楽しみにお待ち下さい!
