column 2015.8.24
 
real local

大阪ローカルガイド《玉造・鶴橋編》

岡崎 麗(大阪R不動産/アートアンドクラフト)
 

「WOOST」吉井千恵さん など

玉造と言えば大阪屈指の住宅街でもあるけれど、古いビルや連棟住宅の懐かしい街並も玉造らしさ

大阪市の東側、中央区⇔天王寺区⇔東成区にまたがる玉造。界隈には真田山や難波宮、大阪城など歴史的名所が点在。心斎橋から地下鉄で6分のアクセスでありながら、喧噪を外れ、のんびり落ち着いた雰囲気が住むのに人気の街です。

そんな玉造で、ちょっと変わった料理を提供する「WOOST」の吉井千恵さんを訪ねました。私が千恵さんの料理を初めて食べたのは約2年前。こんなの食べたこと無い!とびっくりした経験があり、是非もう一度会って話してみたいと思っていたのです。そんなWOOSTの料理と活動の拠点にされている玉造のことを伺いました。

JR玉造駅を降りると東成区側の玉造。市民の台所、日の出商店街の路地にある「バンコ」という店が週末の昼間だけ「WOOST」になる

千恵さんはもともと、カフェブームの草分けでもあった老舗カフェのキッチンで働いていた方。食べ歩くのが好きで、特にアジア系の料理には目がなく、美味しいと思ったものは味を分解して自分流にアレンジするのが好きだったそう。12年勤めたカフェを退職してしばらくした頃、行きつけだったギャラリーバンコのオーナー上野沙央さんに「この場所を使って何かやってみいへん?」と誘われたのが転機でした。

千恵さんとギャラリーバンコ。劇団維新派の舞台美術の方が手掛けた不思議なバー空間

WOOSTの料理のテーマはアジア。
“太陽が真上にある時間帯に召し上がって頂く、原動力となる食事” 。それをエンジンミールと名付けている。話も早々に「ごはん食べましょか!」と定食をご用意くださった。

お椀には、カシューナッツの食感が楽しいオクラとろろトマトふし麺 (緑は春菊のペースト)

茄子と甘唐辛子の花椒(ホワジャオ)南蛮/カレークリームコーンのサモサ/あおさのだし巻き 小夏と〆鯖の生春巻/土佐のモチキビと古代米のおにぎり*大和三尺胡瓜とみょうがと切干大根の醤油漬け&ごぼうと大豆の鉄火味噌乗せ

まずは、一皿に使われる食材の多さ!! そして、口にするたび見た目と味と食感のマッチングの意外性に驚いてしまう。個性的な料理なので何に影響されたのか尋ねてみても師匠がいるわけでもなく、長く海外生活をしていたわけでもないという。

レシピは記録せずに、毎回、想像力と感覚でつくるというのだから芸術肌だなと思う。マクロビなんかを意識しているのか聞いてみると、「地元南河内の野菜とスパイスが中心ですが、肉も魚も使いますよ。ローフードも興味あるけど焼肉も好き!」とストイック過ぎないところもWOOSTさんらしさ。ちなみに、得意料理は天津飯と水餃子なんだとか。

千恵さんの名刺。WOOSTを表す言葉が集約されていました。記憶に残る、まさにそんな料理です

エンジンミールは評判を呼び、予約で完売してしまうことも。店舗を構え、設備を揃えて、サイトをつくって……という飲食店開業の当たり前を素通りして、なんでそんなに人気なんでしょう?

「instagramの影響もありますね(笑)」
なるほど、色鮮やかな料理と遊びゴコロあるネーミングはSNSとフィットしそう。

WOOSTのinstagram。ユニークな食材と鮮やかな色合いが特徴的。 https://instagram.com/chieromantic/

ところで千恵さん、WOOSTを始めて3年とのことですが、ご自身の玉造歴はどれくらいですか?

「友達のバーなんかがあって通うようになり、気付けば10年以上過ごしてますね。都会過ぎないのがちょうど良くて。閑静なところとディープなところの混ざりっぷりとか面白いしね。気に入ってますよ」

学校と公園が多い玉造。こちらは千恵さんが、ぼーっとするのが好きという某私立女子高校の大聖堂

こころも胃袋も満たされたので、千恵さんに教えてもらったスポットに立ち寄りながら鶴橋方面へ歩くことにしました。

玉造からJR環状線で一駅、電車のドアが開くとキムチの匂いがする鶴橋です。東京でいうところの新大久保、リトルコリアと呼ばれ、駅の西側一帯は焼肉屋が密集し、東側は韓国の衣料を扱う店が多く派手な色が目に飛び込んでくる。奥(南)へ進めばガード下に広がる鶴橋市場へ

商店街には喫茶店や寿司屋も。戦災をのがれた鶴橋は戦後の闇市の空気感が残っています

訪れたのが夕方だったので午前ほどの活気はありませんでしたが、それでも狭い通りの両側に生鮮品はもちろん、チヂミに豚足にナムルにキンパがトコロ狭しと並ぶ様子はアジアを感じます。

今日はさらに歩いてもうひとつのコリアンタウン、御幸森商店街までやってきました。

鶴橋商店街から歩いて15分程。在日コリアン居住区の中にある歴史ある商店街です。鶴橋では多く見掛けた観光客もこちらではまばら、よりディープな空気感が漂います

歩いた日がちょうど夏祭りだったので御幸森大神宮には地元の人がたくさん。御幸森商店街は穴場な韓国食品店が多く、先ほどのWOOSTの千恵さんも時々仕入れに来るそうです。お好み焼きもキムチもほんまもんの(観光ナイズドされてない)店があります。

そして厳しい暑さの中、ふたたび鶴橋駅に戻ってきました。
もう喉がカラッカラ! というわけで本日の打ち上げは駅前の「くにさだ」へ。昼間からさくっと飲めるのです。カウンターにぎゅうぎゅうになって座ります

安くて旨いは当たり前。駅前の珈琲屋なみの回転率。こういう店が元気な街は安心します

玉造と鶴橋、キャラの異なる二つの街ですが共通して言えるのは大阪的な商店街が健在ということ。住んだら、駅からまっすぐ家には帰れないかも。

WOOST
大阪市天王寺区玉造元町4-8 2階 (ギャラリー バンコ)
http://woostenginemeals.tumblr.com

開店は隔週土日12:00~18:00
詳しくはWEBサイトで事前にご確認ください。

・WOOSTの定食は事前予約されることをおすすめします。
・ホームパーティやイベントケータリングにも対応。
・予約・お問合せはchieromantic(at)gmail.com まで ※(at)の部分を@に変えてください。

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