面積：

20㎡

私の名前は「志の乃め苑」

私が建った頃、玉造はまだ「東雲（しののめ）」と呼ばれていた。私の名前の由来は江戸時代から使われていたこの旧地名だ。漢字は変えて少し女の子っぽくなっているけど、それは私の前にキリスト教の女子学校があるからかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、私はその女学校とは気が合うと思っている。

「東雲」には「夜明け、明け方に東の空にたなびく雲、暁光を受けて彩られること」といった意味があるらしい。

私のチャームポイントである階段も東向のガラスブロックのスリットから光が射し込む。やわらかい光がザラッとした灰色の壁を彩り雲の中にいるような陰影を浮かばせる。

私ができた当時は、トイレやお風呂がついているモダンで高級なアパートだったのだけど、月日が流れ、今では住んでいる人はほとんどいない。新しい住人もほとんど入ってこない。いつの間にか私は時代遅れの建物になってしまっていたみたい。私に住んでいる人は、私がいつ取り壊されるのか心配している。私も心配だ。

ある日、大阪R不動産という不動産屋がやってきて、水回りが古すぎ！これじゃ住むのは厳しいな〜と言って私の自尊心を少し傷つけた。

でも、この建物をこのまま放置するのは宝の持ち腐れだ！と言って、その後も何度もやってきては、私の階段や、開放感のある屋上の写真を撮っていい建物だな〜、どうしようかな〜と言って帰っていった。

そうして、私は住居だけじゃなく、事務所やアトリエ、店舗としても募集されることになった。

オーナーは入居者が私の部屋を構造に関わること以外は自由に改装することに許可したそうだ。

意外かもしれないけど、天井を落として躯体現しにすると私の天井高はかなり高くなる。大阪R不動産の人間が「素肌美人だ！ポテンシャルが高い！」と興奮していたけど私にはよくわからない。

こんな時代遅れな私を気に入ってくれる人が本当にいるのか心配だけど、私は新しい入居者たちと新しい一歩を踏み出せる日を楽しみにしている。

※コラムは建物が話している設定です

（ちゅら）

※共用屋上（専用バルコニーは無し）

※改装可（事前確認要）

※現状有姿で引渡し

※事務所・店舗利用可（業種要相談、飲食不可）

※総賃料：賃料、共益費、水道代の合計32,000円

※事務所・店舗利用の場合賃料、共益費に別途消費税

※2019年12月31日までの定期賃貸借契約（2ヶ月前告知で期間内解約可）

※1年以内の早期解約時違約金有（総賃料の1ヶ月分）