column 2013.11.8
 
Rトピックス

“ストック×リノベーション”のススメ ―暮らし方編―

岡本典子 廣川未来(大阪R不動産/アートアンドクラフト)
 

4月の R トピックス『“ストック×リノベーション”のススメ』では中古不動産を買ってリノベーションする方法を紹介しました。今回は“暮らし方編”と題し、大阪R不動産を運営するアートアンドクラフトがお手伝いした事例を交え、更に掘り下げてその魅力をお伝えします。

「アウトドア」「キャンプ」をキーワードに、外の要素を内に取り込んだ住まいの事例。木が生えたリビングやモルタルのオーダーキッチンはリノベーションならでは。

今の住まい・暮らしを再考する

「今の家に、べつに不便はしていない。……でも特別な愛着もない」
いちばん長く過ごす場所、これからずっと暮らす家にそんな無自覚でいていいの?

そんなときに思い出して欲しいのが“ストック×リノベーション”という選択。
最大公約数に向けてつくられた、可もなく不可もない既製の住まいに自分を合わせるのではなく、ストック(中古不動産)を買って、自分好みに改装(リノベーション)して暮らすという手段です。

築25〜35年の中古マンションでよく見る間取り。核家族向けにLDKに区切られた住戸は、都心部における平均世帯人数が2人以下という現在もなおホントに便利で快適なのか。(※画像をクリックすると拡大します)

リノベーションで部屋を自分のものに

<ケース1  思いっきり趣味を楽しむ>
彫金に日曜大工。
夫婦揃ってモノ作りが趣味という夫婦が目指したのは、気兼ねなく趣味に没頭できる住まいでした。

リビングから玄関を見る。思い切って大きく取った土間スペースは既製の住まいではあり得ない光景。

「玄関は狭くて暗いのが当たり前?」
「壁で囲われてこその部屋?」
“ストック×リノベーション”でそんな概念とは決別しましょう!
こちらの住まいは玄関扉を開けると77平米の住戸の約半分を占める土間スペースが広がります。
とある映画に出てくる格納庫をイメージしてつくられました。間取りは3LDKからワンルームへ。

左:BEFORE 右:AFTER。土間は趣味のスペース、無垢フローリングは住スペース。(図面はクリックすると拡大します)

玄関でスリッパに履き替え土間へ。無垢の杉フローリングの上ではスリッパを脱いでくつろぐ。
壁で空間を区切るのではなく床材と、段差で緩やかに空間を分けています。 土間は汚しても気にならないから、モノ作りにはうってつけ。

以前は2DKのいわゆる普通の賃貸マンション暮らしだった夫婦。
間取りの使いにくさをDIYで工夫しながら生活していたが妥協してずっと住み続ける気はなかったそう。
そんなとき訪れたリノベーションの内覧会で“ストック×リノベーション”という選択肢を知り、
見た目ではなく「こんなふうに暮らしたい」を実現するには、用意された住まいでは納得できないと思ったそうです。

そこから自分たちの理想の住まいのイメージを膨らませ、貯金をし、物件を探し、住まい作りの準備を進めてきました。
完成した住まいは、まさに夫婦の趣味が暮らしの中にとけ込んだ唯一無二の空間です。

<ケース2 キッチンが中心の生活>

LDK の中心に設置したアイランドキッチンは幅3メートル×奥行き90センチ。ホームパーティーにはちょっと贅沢すぎるキッチンですが……?

食品会社で料理イベントに携わる方の1人住まい。
「自宅で料理教室を開きたい」との思いをきっかけにリノベーションしました。機能性・実用性を重視したスタジオのような仕様ではなく、家に人を招いて料理を振る舞うイメージでした。

左:BEFORE 右:AFTER 人が来ることを前提に玄関、パウダースペースはゆとりを持たせたつくりにしました。(図面はクリックすると拡大します)

キッチンの向こうはリビング。あくまでも自宅としての心地良さは必要不可欠。人を迎え入れる雰囲気を出すためにエントランスの建具にもこだわりました。

日差しが入る LDK にはフレンチパインの無垢フローリング。
キッチンは素材や寸法、配置に至るまで自身の仕事で得たノウハウを落とし込んだオーダーメイド。
住居としての心地よさも、そして、将来の夢も、両方兼ね備えた暮らし方を目指しました。

現在は料理教室をスタート。こだわってつくったアイランドキッチンを生徒が囲み、美味しい料理が並ぶ様子が目に浮かびます。

リノベーションで“自分らしさ”を実現する

中古不動産を購入し、リノベーションして暮らす人が増えてきたのは、豊かさの尺度が新しさや豪華さだった時代が変わり、与えられた新品よりも、既存の中古をベースに作る方が、ずっと豊かな住まいができあがるんだと人々が気づいた結果です。

アートアンドクラフトがリノベーションを始めたのも、「自分たちが暮らしたいと思える住まいをつくりたかったから」。実に、単純な理由からでした。これは私たちだけが感じている想いではないはず。

今回紹介しました住まいはほんの一例です。
まずは、用意された間取りをそのまま受け入れるのではなく、自分の暮らしを叶えてくれる“ハコ”として見てください。ストック&リノベーションで自分にあわせた住まいはいつからでもつくれますよ。

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